2009-01-01から1年間の記事一覧

ウチそと研通信26 −原風景−

先日、東京都写真美術館の柴田敏雄展を見た。昔、誰だったか外国のミュージシャンが日本の田んぼを見てコンピュータチップのようだと言っていたが、几帳面にコンクリートで覆われたのり面を見ていると新しいけれどどこか懐かしい、美しいけれどなんとなく痛…

ウチそと研通信25 −「W・G・ゼーバルトと挿入された写真」−

ここのところ遅ればせながら、ゼーバルトの散文作品を少しずつ読み始めている。ゼーバルトは1944年、ドイツに生まれ、後年英国で近現代ドイツ文学の講座を持っていた人物とある。2001年に事故死をしている。 私は数冊の翻訳された散文作品に眼を通し…

ウチそと研通信24 −模倣について−

中学生だった頃、自分や他人のしぐさ、発語、ふるまいのことごとくが既に誰かによって演じられた先例の模倣をくり返しているだけじゃないかと思えてしまったことがあり、やりきれない感じがしてならなかった。しかし、そういって嘆くことだって、それ自体が…

ウチそと研通信23 −「夜会」の半券−

或るとき、村全体の住民が突然消失し、後には食べかけのトースト、干しかけの洗濯物がそのままテーブルや洗濯機のそばに置かれている。そして壁の時計だけはこつこつと時を静かに刻んでいる。そのような情景が超常的な物語のなかによく描かれていたりする。 …

ウチそと研通信22 −メンタル マップ−

私たちは知らず知らずのうちに、心の中に地図をつくっている。 たとえば通勤や通学でいつも通る道の風景や休みの日の散歩道、旅行先で見た知らない土地の風景など、その時々の自分自身の知識や経験、目の高さで蓄積されてゆく。だんだんと歳を重ねてゆくと、…

ウチそと研通信21 −上野の例会−

先日、ウチそと研2回目の例会があり、上野の山に集まった。西洋美術館の常設の部で、中世末期以来の西洋絵画の流れをたどる展示を眺め、不忍池の茶店へ移ってめいめい所感を述べあう。 D・ホックニーの著作「Secret Knowledge」の視点に導かれ意識して見て…

ウチそと研通信20 ―写真の読み手―

昨年春、草森紳一氏が亡くなっている。 先月の半ばに銀座で写真家のO先生に偶然お目にかかることがあった。そして立ち話ではと、ヨーロッパ風のカフェの、それほど広くはない一隅でお茶を頂くことになった。O先生は草森さんとは親しく、以前に若い時代の交…