2016-01-01から1年間の記事一覧

ウチそと研通信152−寺山修司記念館−

飛行機が着陸した衝撃で目が覚めた。窓からF‐15が2、3機とまっているのが見えた。 三沢にある寺山修司記念館は開館してもうすぐ20年になるが、以前から気になっていた施設で、今回はじめて訪れることができた。 他の作家のいわゆる文学館とは趣が異なり…

ウチそと研通信151 -吉村朗『Akira Yoshimura Works』-

本書(大隅書店刊)の巻頭に収められた〈分水嶺 The River〉は、阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が相次いだ1995年、都市のカタストロフをまざまざと見せつける二つの出来事に挟まれた2月後半の期間に、銀座ニコンサロンの個展で当初発表されたシリーズだっ…

ウチそと研通信150 −東京南部−

大田区、港区、品川区の3区が「東京南部」と呼ばれていることを最近知った。京浜工業地帯の東京側にあたるが、西東京で育った私には耳慣れない呼び方であった。昨年から仕事やらプライベートやらで、この南部を訪れる機会が増え、東京を南北に行ったり来たり…

ウチそと研通信149 −大辻清司と稲垣足穂、そしてブラザーズ・クエイの展示−

前回に続いて大辻清司に関することを残しておこう。先だってたまたま何気なく稲垣足穂に関するトリビュート本(「稲垣足穂の世界‐タルホスコープ‐」平凡社コロナブックス)を読み始めたら、大辻さんの「ゼンマイ」と題するエッセイ風の文章に出会い、少し意…

ウチそと研通信148 −「写真ノート」(大辻清司著)をもう一度読み返す−

2001年に亡くなった写真家大辻清司さんの本格的な型録/資料集が少し前に刊行された。この資料集は「大辻清司」−武蔵野美術大学 美術館・図書館 所蔵作品目録−と題され、500ページ近いボリュームがある。タイトル通り、武蔵野美術大学美術館・図書館に収蔵さ…

ウチそと研通信147 −「ポンピドー・センター傑作展」など−

8月初めに見た都美術館のポンピドー展のことなどを備忘しておこうと思いつつ、もう9月だ。パリのポンピドー・センターを訪ねたのは出来上がって間もない頃で、巨大なダクトやチューブ状の通路などはやはり目立ったが、それより人の流れ方や在り方が当時のパ…

ウチそと研通信146 −俯瞰の誘惑−

パノラマ写真に興味を持ち撮影を始めてそろそろ9年になる。今ではスマホにもパノラマ撮影機能がついているし、ネットで検索すればたくさんパノラマのイメージが出てくるようになった。 パノラマ画像の起源については詳しくないが、洛中洛外図や名所図会、仏…

ウチそと研通信145 −「TODAY TOKYO」の前後−

先日、四谷三丁目のギャラリー・ニエプスで田中長徳さんの展示を見た。日曜日の午後、ギャラリー内は混雑していて、来場者の間をすり抜けるように作品を見て歩いた。すでに会場には田中さんの姿があって作品の説明をしているところであった。ここ何年か、雑…

ウチそと研通信144 −福山えみ写真展など、また不明瞭ということについて−

ここのところ気ぜわしい日々が続いて、気になる展示をいくつも見落としている。また構えた大きな写真展のいくつかは、なんだか遠慮したいというのがここのところの気分でもある。その中で最近観覧した写真展をいくつか簡単にメモしておきたい。 福山えみさん…

ウチそと研通信143 −タテ位置の街−

京都に寄る機会があり、前から見たいと思っていた木村伊兵衛のカラー写真、京都駅でやっている「木村伊兵衛 パリ残像」を観た。 シャツやスカート、自動車やネオンの赤を中心に、タテ位置でまとめられた展示はリズム感があり、作者の楽しい気分が伝わってく…

ウチそと研通信142 ―「イスタンブール‐思い出とこの町‐」(オルハン・パムク著)のテキストと画像―

オルハン・パムクというトルコの作家のことを全く知らなかったが、偶然手にしたこの本を開いた時に、つい引き込まれた。頁のあちらこちらに古い町の写真や版画が散りばめられて、そのどれもが魅力的だったからだ。奥付を見るとパムク氏は1998年に「わたしの…

ウチそと研通信141−近美で見た「恩地孝四郎展」とW氏のドローイング−

先日、久しぶりにウチそと研のメンバーが集まる機会があり、竹橋の近代美術館で開催中の「恩地孝四郎展」を観覧しようということになった。恩地孝四郎の版画作品、とくに木版画は何かの折には目にしたことがあるに違いない。恩地が木版画を始め、田中恭吉や…

ウチそと研通信140 −昨年12月の「リフレクション」写真展と今年1月の川田喜久治個展を観て−

あっという間に今年も2月半ばになってしまった。その間、いろいろな写真展があり、見に行こうとしながらついつい見逃してしまった写真展も多いが、昨年末の「リフレクション2015」展と今年1月に見た川田喜久治氏の個展「Last Things」について、ここで備忘的…