ウチそと研通信170 ー港のにぎわいー

最近では11月3日頃に催されることが吉例の八幡起業祭は、官営八幡製鐵所の創業を記念し20世紀初めより、もとは11月18日を中心に前後3日間、地区をあげて盛大に催されてきたという。まさにそのシーズンに、母娘とおぼしきキツネ襟巻の婦人、白い帽子の少女は…

ウチそと研通信169 −アシカ池ー

現在の到津の森公園にバス停側の南ゲートから入場してすぐ、起伏に富んだ地形の公園内でもっとも低地にあたるところに“姿見の池”がある。それと同じ地点だろうか。乾板の中に2枚、クロマツの疎林に囲まれたアシカ池の光景を見つけた。ウェブサイト「福岡県…

ウチそと研通信168 ーいとうづの森へー

北九州市の戸畑区、八幡西区、小倉北区にまたがるエリアに、金比羅山という標高125メートルの山を中心とした大きな自然公園「福岡県営中央公園」があり、「到津の森公園」はその一角に位置する。現在は市営の同園、その前身は“到津遊園”。1932(昭和7)年、…

ウチそと研通信167 ―飯田鉄写真展「RECORDARE」開催のお知らせ―

昨年の個展「街の記憶術」に続いて飯田鉄が写真展を10月2日から10月7日まで開催します。題して「RECORDARE」。今回は13年間にわたってデジタルカメラで撮影してきたカラー写真を展示します。デジタル画像のみの展示は2007年の「腐爛と成熟」以来になります。…

ウチそと研通信166 ―『水平の瞳孔』展 最終日 ー

『水平の瞳孔』展もいよいよ明日、9月1日(土)が最終日です。 16時30分までですのでよろしくお願いいたします。

ウチそと研通信165 ―写真の内側・外側研究会 第二回展覧会『水平の瞳孔』―

本ブログ「ウチそと研通信」を始めて、そろそろ10年になろうとしていますが、このたび、われわれ研究会の二回目の展覧会『水平の瞳孔』を8月26日(日)より、ギャラリーニエプスにおいて開催することになりました。 なお初日は、16時より来場者が持ち寄った…

ウチそと研通信164 ー「夏の驟雨」そして、「真夏の夜のジャズ」のマへリア・ジャクソンー

今年の夏は早い梅雨明けとともに、連日、過酷な暑さが続き、日本全国で多くの老人達が亡くなり、誰もが心身ともに疲弊している。8月も暑さが続きそうだ。こうした夏は私が記憶する限り初めてだ。同時に西日本の惨禍を聞くと、日本中が空襲をうけ、原子爆弾に…

ウチそと研通信163 ー上海の博物館などー

少し前のことになるが、5月の連休明けに上海を訪れる機会があった。3泊という短い期間であったが新しめの博物館二つを見ることができた。 一つめは「上海自然博物館」で、もともとは外灘の近くに1956年開館したものだが、2015年に上海市内の中心近くの静安…

ウチそと研通信162―関口正夫、ミウラカズト連続展に寄せて―

関口正夫は、1946年、東京田端に生れた。桑沢デザイン研究所写真研究科に学び、卒業後、同級の牛腸茂雄と写真集『日々』を刊行する。するどい刃物の切れ味をおもわせるスナップショットで1960年代後半の社会的風景をつづる『日々』の関口のパートでは、沈着…

ウチそと研通信161―資料展示『影どものすむ部屋−瀧口修造の書斎』をみる―

今回も短い覚え書きである。少し前になるが、慶應義塾大学アートセンターで催されていた、アートアーカイブ資料展ⅩⅥ 『影どものすむ部屋−瀧口修造の書斎』(2018年1月22日〜3月16日)をみた。初めて訪れた会場は壁面、天井が白く塗られたいわゆる…

ウチそと研通信160―久しぶりに草森紳一を読むー

『本の読み方』-墓場の書斎に閉じこもる-という本を読んで面白かった。著者は草森紳一。草森紳一は10年前に亡くなっているが、1994年から1996年まで雑誌に連載されたものが没後にまとめられて刊行されている。成立の経緯はわからない。内容はタイトル通り、…

ウチそと研通信159 −50年前の『日録』から引き出される−

昨年の秋に代田橋のギャラリー「伝」で、桑原敏郎と谷口雅洋の二人による写真展示があった。桑原敏郎はアジアの街などが写っているカラー。固着とかからはずいぶん離れた足取りと視線で撮影をしている。谷口雅洋のカラーではヨーロッパと思われる場所の叙情…

ウチそと研通信158 ―時間の積層―

少し前になるが、小田原にある「生命の星・地球博物館」の企画展、『地球を「はぎ取る」』展(地層が伝える大地の記憶)を観た。地層をはぎ取り、型どり、切り取ったさまざまな種類の大型の地層標本で構成された特別展で、地球上で起こったさまざまな出来事…

ウチそと研通信157 −澁澤龍彦「ドラコニアの地平展」で地球儀をみる。−

先月の雨もよいの一日、世田谷文学館で催されている「ドラコニアの地平」展に出かけた。澁澤龍彦の原稿や身の周りの品々を主に展示しているとのこと、また知人からミノルタCLEも持ち物として展示されているのを聞いて足を伸ばしてみたのである。澁澤龍彦につ…

ウチそと研通信156 慰藉と対峙/内と外 榎倉康二〈予兆のためのコレクション〉

最近、榎倉康二の視線をふと感じたのは、イギリスの写真家フランシス・カーニーの作品〈Five People Thinking the Same Thing〉(1998)を見返している時のことだった。双方の写真作品のあいだを繋ぐなにかを感じた、というべきか。カーニーの5枚組の写真で…

ウチそと研通信155 −売野雅勇(うりの まさお)の時代−

今年6月末から7月初めにかけて開催した個展「街の記憶術」は、バブル時代と重なる1980年代半ばの築地の変わりゆく情景を撮影した写真で構成したものだった。来場してくださった方々の中にはあのバブル期のことを知らない若い世代も多く、こちらがたかだか30…

ウチそと研通信154 連続した自分の個展のこと、山崎弘義氏の「Know Thyself」展について

今年の関東の梅雨はあまり雨も降らないままにとうとう明けてしまったようだ。 ここのところ、3月にギャラリー・ニエプスで、そして6月末から7月初めにかけては小伝馬町のルーニィでと個展が続いた。連続しての展示を初めから予定をしていたわけではないけれ…

ウチそと通信153 −吉村朗のこと、いくつかの最近見た展示−

少し前に吉村朗の写真集について大日方さんが書いている。吉村朗は私にとっても気になる人なのでここでほんの少し個人的な覚書を綴っておく。川崎市民ミュージアムでの展示は見ていないが、大日方さんが述べているように、ある時期から吉村朗の写真が大きく…

ウチそと研通信152−寺山修司記念館−

飛行機が着陸した衝撃で目が覚めた。窓からF‐15が2、3機とまっているのが見えた。 三沢にある寺山修司記念館は開館してもうすぐ20年になるが、以前から気になっていた施設で、今回はじめて訪れることができた。 他の作家のいわゆる文学館とは趣が異なり…

ウチそと研通信151 -吉村朗『Akira Yoshimura Works』-

本書(大隅書店刊)の巻頭に収められた〈分水嶺 The River〉は、阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件が相次いだ1995年、都市のカタストロフをまざまざと見せつける二つの出来事に挟まれた2月後半の期間に、銀座ニコンサロンの個展で当初発表されたシリーズだっ…

ウチそと研通信150 −東京南部−

大田区、港区、品川区の3区が「東京南部」と呼ばれていることを最近知った。京浜工業地帯の東京側にあたるが、西東京で育った私には耳慣れない呼び方であった。昨年から仕事やらプライベートやらで、この南部を訪れる機会が増え、東京を南北に行ったり来たり…

ウチそと研通信149 −大辻清司と稲垣足穂、そしてブラザーズ・クエイの展示−

前回に続いて大辻清司に関することを残しておこう。先だってたまたま何気なく稲垣足穂に関するトリビュート本(「稲垣足穂の世界‐タルホスコープ‐」平凡社コロナブックス)を読み始めたら、大辻さんの「ゼンマイ」と題するエッセイ風の文章に出会い、少し意…

ウチそと研通信148 −「写真ノート」(大辻清司著)をもう一度読み返す−

2001年に亡くなった写真家大辻清司さんの本格的な型録/資料集が少し前に刊行された。この資料集は「大辻清司」−武蔵野美術大学 美術館・図書館 所蔵作品目録−と題され、500ページ近いボリュームがある。タイトル通り、武蔵野美術大学美術館・図書館に収蔵さ…

ウチそと研通信147 −「ポンピドー・センター傑作展」など−

8月初めに見た都美術館のポンピドー展のことなどを備忘しておこうと思いつつ、もう9月だ。パリのポンピドー・センターを訪ねたのは出来上がって間もない頃で、巨大なダクトやチューブ状の通路などはやはり目立ったが、それより人の流れ方や在り方が当時のパ…

ウチそと研通信146 −俯瞰の誘惑−

パノラマ写真に興味を持ち撮影を始めてそろそろ9年になる。今ではスマホにもパノラマ撮影機能がついているし、ネットで検索すればたくさんパノラマのイメージが出てくるようになった。 パノラマ画像の起源については詳しくないが、洛中洛外図や名所図会、仏…

ウチそと研通信145 −「TODAY TOKYO」の前後−

先日、四谷三丁目のギャラリー・ニエプスで田中長徳さんの展示を見た。日曜日の午後、ギャラリー内は混雑していて、来場者の間をすり抜けるように作品を見て歩いた。すでに会場には田中さんの姿があって作品の説明をしているところであった。ここ何年か、雑…

ウチそと研通信144 −福山えみ写真展など、また不明瞭ということについて−

ここのところ気ぜわしい日々が続いて、気になる展示をいくつも見落としている。また構えた大きな写真展のいくつかは、なんだか遠慮したいというのがここのところの気分でもある。その中で最近観覧した写真展をいくつか簡単にメモしておきたい。 福山えみさん…

ウチそと研通信143 −タテ位置の街−

京都に寄る機会があり、前から見たいと思っていた木村伊兵衛のカラー写真、京都駅でやっている「木村伊兵衛 パリ残像」を観た。 シャツやスカート、自動車やネオンの赤を中心に、タテ位置でまとめられた展示はリズム感があり、作者の楽しい気分が伝わってく…

ウチそと研通信142 ―「イスタンブール‐思い出とこの町‐」(オルハン・パムク著)のテキストと画像―

オルハン・パムクというトルコの作家のことを全く知らなかったが、偶然手にしたこの本を開いた時に、つい引き込まれた。頁のあちらこちらに古い町の写真や版画が散りばめられて、そのどれもが魅力的だったからだ。奥付を見るとパムク氏は1998年に「わたしの…

ウチそと研通信141−近美で見た「恩地孝四郎展」とW氏のドローイング−

先日、久しぶりにウチそと研のメンバーが集まる機会があり、竹橋の近代美術館で開催中の「恩地孝四郎展」を観覧しようということになった。恩地孝四郎の版画作品、とくに木版画は何かの折には目にしたことがあるに違いない。恩地が木版画を始め、田中恭吉や…