2008-01-01から1年間の記事一覧

ウチそと研通信19 −ハコモノ好き−

繰り返しになってしまうが博物館や美術館が好きでよく見に行く。旅先でもできるだけ博物館や美術館を見ている。小さな施設でもその土地ならではの特徴があり、いろいろと発見があって面白い。どちらかといえば美術館より博物館、資料館の方が好きかもしれな…

ウチそと研通信18 ―1960年の渋谷―

蔵原惟繕の監督作品、「狂熱の季節」をはじめて観た。東京の渋谷を背景に,ティンエージの若者達のエピソードを映像にしたもので、1960年度の作品である。 主演の川地民夫は見物だった。鈴木清順の幾つかの作品にバイプレイヤーとして登場する時の川地民夫の…

ウチそと研通信17 −ロトチェンコと北代−

1920年代の途中でアレクサンドル・ロトチェンコが絵画制作を離れ、写真へ向かうことになったのは、それを促したきっかけとして、ライカという性能のいいドイツ製小型カメラが登場したことが大きかったといわれる。多様な光量に対応でき、視点を自在に動かし…

ウチそと研通信16  −岡本太郎美術館−

久しぶりに生田緑地へ。 学校の近くにあったので良く通った場所だ。季節ごとにいろんな野鳥を見ることができる。 民家園には何度か行ったことがあるが、プラネタリウムは見た記憶がない。青少年科学館の外観が古いということもあるだろうが、理由はよく覚え…

ウチそと研通信15 −ジュリー−

かなり昔、沢田研二という人を新聞の仕事で撮影した事がある。 毎週ひとりずつ、タレントといわれるひと達を紹介する欄の、よく言えばポートレートを撮影する仕事のひとつであった。流されてゆくような仕事でもあったが、そのときの彼の瑞々しさはひときわで…

ウチそと研通信14 −ピラネージ展を見て−

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージの版画展を町田市の版画美術館で見た。ピラネージは18世紀イタリアの版画家、建築家で、ゲーテや多くの文人、建築家、画家に影響を与えた人だ。この美術館でピラネージを見るのは二度目になる。前回はかなり以前で…

ウチそと研通信13 −写真の後ろ姿−

通信9の「おおぜいで一枚を」 (http://d.hatena.ne.jp/uchi-soto/20081027/1225065987) で眺めたのは、アメリカの写真家ウォーカー・エヴァンズが1930年代、ある住まいの室内とその隅っこにいる男の子を撮った一枚だったのだが、これを見て直ちに、「知らな…

ウチそと研通信12 −フレームのウチそと2−

見上げるほどの高さの板塀に囲まれた空間。表面は黒く焼かれ、その上にらくだ色のかたまりがうねうねと描かれている。細かく繰り返されるウロコ模様はすぐに認められるが、視野からはみ出る全体像は中々把握できない。じっと見ているとウロコの間に鋭い目が…

ウチそと研通信11 −映像の演出−

吉村公三郎の著作に「映像の演出」と言う本がある。誤解を恐れずに言えば演出の技法書である。内容はまさにタイトルどうりで、いささかの掛け値もない。吉村公三郎は松竹の出身で、後年大映でいくつかの作品を監督している。いわゆる巨匠の一人である。師匠…

ウチそと研通信10 −フレームのウチそと−

「ムットーニのからくり劇場」を見に世田谷文学館へ。 作者のムットーニ(武藤政彦)氏によれば、“立体のカラクリ箱であり、動き・光り・そして音楽などの要素が絡み合った、小さなストーリーボックス”(http://www.muttoni.net/about/index.html)である。1…

ウチそと研通信9 −おおぜいで一枚を−

このあいだ、海外の某写真家が撮った一枚をおおぜいの人たちにスライドで見せた。黙って投影しているその画像からどんな印象を受けたか、一人一人にきいてみた(短い時間で白紙に走り書きしてもらった)。そのなかの幾つかを紹介してみます。一枚から生まれ…

ウチそと研通信8 −キャパの写真集を見て−

授業の際、ときおり学生たちに写真集を見せる事がある。しかし、美術系の学校である事もあって、どうしてもアート志向のものに片寄ってしまいがちである。そこで少し違う傾向のものをと思い、手元にあったキャパの写真集を持っていった事がある。ロバート・…

ウチそと研通信7 −大判写真ワークショップ−

昨年より写真のワークショップの企画運営に参加している。 東京を4×5カメラで撮影するというもので、第1回目の昨年は浅草を、第2回目の今年は新宿を撮影場所にしている。10年続けたらニューヨークで写真展を開くこと(予定)になっている。参加者は私…

ウチそと研通信6 −スナップショットの時間(その2)−

関口正夫と三浦和人の写真、メモの続き。・関口さんのスナップでは、重心を低くとることが習性のようにつらぬかれており、画面の群れにうかがえるその歩行のさまは、下半身が地べたにぴたりと添う、すり足を思わせる。それに対し、三浦さんの場合は、重心を…

ウチそと研通信5 −「とべない沈黙」の写真−

動画と静止画について、大山さんが考察をしている。大山さんの論考とは少しずれるけれど、動画と静止画の関係のなかで少し面白いと考えられる写真のジャンルに「スチル写真」(あるいはスチールとも呼ぶ)というものがある。そのままだと静物写真の事と思わ…

ウチそと研通信4 −動画と静止画−

終了間近の東京都写真美術館の「液晶絵画」展に行く。 マルチメディアという言葉が陳腐に聞こえるほど、現在ではさまざまな表現手法が交じり合って、それぞれの境界は曖昧になってきている。私は、かつて通った専門学校では映画と写真の両方を学び、最終的に…

ウチそと研通信3 −スナップショットの時間(その1)−

飯田さんが触れられた三鷹市美術ギャラリーの関口正夫、三浦和人展「スナップショットの時間」に、僕は図録寄稿者、ギャラリーでの鼎談パネラーとして関わりをもった。二人の40年にわたる写真行為が、自分にどんな感化をあたえるのか、感化を受けたならそこ…

ウチそと研通信2 −写真を撮り続ける−

先日、三鷹で関口正夫、三浦和人の二人展を見た。 なかなか見ごたえのある展示で、お二人とも40年以上もしっかりと写真と向き合ってきたことがよく分かる興味深い展覧会であった。この展示を見てまず感じたことは、写真という道具がどこに力点がおかれるか…

ウチそと研通信1 −はじめに−

これから始まる写真の内側・外側研究会は飯田鉄、大日方欣一、大山裕の三人が中心になって活動をするグループです。写真に対する興味を中心にして、写真と繋がるもの、写真と重なるもの、そして写真と響きあうもの、さらに写真を照らし出すものたちのことを…

写真の内側・外側研究会 趣旨と今後の予定

■写真を見る経験を広げ、深めていくことをねらい、写真と取りまく領域にあるさまざまな 表現物に触れ、味わい、話し合うことを試みていきます。■毎回、一つのテーマや切り口を設けて、写真の内・外をたずね歩き、ある時はゲスト講師 の話に耳を傾け、参加者…