飯田鉄
昨年の個展「街の記憶術」に続いて飯田鉄が写真展を10月2日から10月7日まで開催します。題して「RECORDARE」。今回は13年間にわたってデジタルカメラで撮影してきたカラー写真を展示します。デジタル画像のみの展示は2007年の「腐爛と成熟」以来になります。…
今年の夏は早い梅雨明けとともに、連日、過酷な暑さが続き、日本全国で多くの老人達が亡くなり、誰もが心身ともに疲弊している。8月も暑さが続きそうだ。こうした夏は私が記憶する限り初めてだ。同時に西日本の惨禍を聞くと、日本中が空襲をうけ、原子爆弾に…
今回も短い覚え書きである。少し前になるが、慶應義塾大学アートセンターで催されていた、アートアーカイブ資料展ⅩⅥ 『影どものすむ部屋−瀧口修造の書斎』(2018年1月22日〜3月16日)をみた。初めて訪れた会場は壁面、天井が白く塗られたいわゆる…
『本の読み方』-墓場の書斎に閉じこもる-という本を読んで面白かった。著者は草森紳一。草森紳一は10年前に亡くなっているが、1994年から1996年まで雑誌に連載されたものが没後にまとめられて刊行されている。成立の経緯はわからない。内容はタイトル通り、…
昨年の秋に代田橋のギャラリー「伝」で、桑原敏郎と谷口雅洋の二人による写真展示があった。桑原敏郎はアジアの街などが写っているカラー。固着とかからはずいぶん離れた足取りと視線で撮影をしている。谷口雅洋のカラーではヨーロッパと思われる場所の叙情…
先月の雨もよいの一日、世田谷文学館で催されている「ドラコニアの地平」展に出かけた。澁澤龍彦の原稿や身の周りの品々を主に展示しているとのこと、また知人からミノルタCLEも持ち物として展示されているのを聞いて足を伸ばしてみたのである。澁澤龍彦につ…
今年6月末から7月初めにかけて開催した個展「街の記憶術」は、バブル時代と重なる1980年代半ばの築地の変わりゆく情景を撮影した写真で構成したものだった。来場してくださった方々の中にはあのバブル期のことを知らない若い世代も多く、こちらがたかだか30…
今年の関東の梅雨はあまり雨も降らないままにとうとう明けてしまったようだ。 ここのところ、3月にギャラリー・ニエプスで、そして6月末から7月初めにかけては小伝馬町のルーニィでと個展が続いた。連続しての展示を初めから予定をしていたわけではないけれ…
少し前に吉村朗の写真集について大日方さんが書いている。吉村朗は私にとっても気になる人なのでここでほんの少し個人的な覚書を綴っておく。川崎市民ミュージアムでの展示は見ていないが、大日方さんが述べているように、ある時期から吉村朗の写真が大きく…
前回に続いて大辻清司に関することを残しておこう。先だってたまたま何気なく稲垣足穂に関するトリビュート本(「稲垣足穂の世界‐タルホスコープ‐」平凡社コロナブックス)を読み始めたら、大辻さんの「ゼンマイ」と題するエッセイ風の文章に出会い、少し意…
2001年に亡くなった写真家大辻清司さんの本格的な型録/資料集が少し前に刊行された。この資料集は「大辻清司」−武蔵野美術大学 美術館・図書館 所蔵作品目録−と題され、500ページ近いボリュームがある。タイトル通り、武蔵野美術大学美術館・図書館に収蔵さ…
8月初めに見た都美術館のポンピドー展のことなどを備忘しておこうと思いつつ、もう9月だ。パリのポンピドー・センターを訪ねたのは出来上がって間もない頃で、巨大なダクトやチューブ状の通路などはやはり目立ったが、それより人の流れ方や在り方が当時のパ…
先日、四谷三丁目のギャラリー・ニエプスで田中長徳さんの展示を見た。日曜日の午後、ギャラリー内は混雑していて、来場者の間をすり抜けるように作品を見て歩いた。すでに会場には田中さんの姿があって作品の説明をしているところであった。ここ何年か、雑…
ここのところ気ぜわしい日々が続いて、気になる展示をいくつも見落としている。また構えた大きな写真展のいくつかは、なんだか遠慮したいというのがここのところの気分でもある。その中で最近観覧した写真展をいくつか簡単にメモしておきたい。 福山えみさん…
オルハン・パムクというトルコの作家のことを全く知らなかったが、偶然手にしたこの本を開いた時に、つい引き込まれた。頁のあちらこちらに古い町の写真や版画が散りばめられて、そのどれもが魅力的だったからだ。奥付を見るとパムク氏は1998年に「わたしの…
先日、久しぶりにウチそと研のメンバーが集まる機会があり、竹橋の近代美術館で開催中の「恩地孝四郎展」を観覧しようということになった。恩地孝四郎の版画作品、とくに木版画は何かの折には目にしたことがあるに違いない。恩地が木版画を始め、田中恭吉や…
あっという間に今年も2月半ばになってしまった。その間、いろいろな写真展があり、見に行こうとしながらついつい見逃してしまった写真展も多いが、昨年末の「リフレクション2015」展と今年1月に見た川田喜久治氏の個展「Last Things」について、ここで備忘的…
赤瀬川源平さんが亡くなってもう一年が経つ。昨年末に千葉と町田で開かれた展覧会が回顧展めいたものになってしまったが、とても咀嚼しきれない大きなかたまりを与えられたような気がしている。お目にかかると物静かで、軽いユーモアでいなされるのがいつも…
先の11月6日に虎ノ門で催されたライカ社の新製品発表会を覗いてきた。ライカSLと名付けられたフルサイズセンサーを持つ、一般的にミラーレスと呼ばれるタイプのデジタルカメラが新製品として発表され、会場では製品プロモーションのビデオクリップが繰り返し…
先日、コニカミノルタプラザで行われていた「Into the world of Pirosmani」という展示を見る。現在ジョージアと改名されているグルジアに、ピロスマニという画家の作品を見に行く目的で短い旅をした中での撮影の成果が並べられていた。質素でさらっとした展…
1997年に発刊された「ロンドン骨董街の人びと」という本を読んだ。すでに1998年度の講談社エッセー賞も取り、現在文庫にもなっているが興味深い内容だ。著者は六嶋由岐子氏。氏が1990年前後にロンドンの老舗骨董店で働いていた頃の体験を記し、骨董と英国人…
年明けに以前から気になっていた城戸保氏の写真を見に行く。これまで氏の作品には印刷物とweb上で目に触れていたに過ぎないが、なかなか印象深く、ようやく展示のイメージを実際に見ることになった。小さな画廊空間に適度な密度で折り込まれているような展示…
先週の水曜日、いくつかの展覧会を見てまわる。午前に六本木でラファエル前派展、昼から目黒で世界の風景写真展、そして銀座ニコンサロンで阿部直樹氏の写真展、その後に新宿界隈でいくつかの展示を見ている。一度に多くの展示を見るというのも集中力の点で…
今年もカメラや映像機器のショー、CP+(プラス)が開催された。初日に会場のパシフィコ横浜まで出掛けてみる。このショーはデジタルスティルカメラを中心にした展示で、興味ある新製品を速く見られることが大きな楽しみだ。今年はもうひとつ、撮影の道具と…
暮れから今年の正月にかけてはTV三昧になってしまった。普段TVの無い環境にいるので、たまにTVのある場所で時間を過ごすと、つい画面に見入ってしまうことが多い。今回はNHKの朝の連ドラの総集編を見て、ようやく世間からの遅れをとりもどすことができた。昨…
今年7月、10月と神田の二つの会場でグループ展に参加した。どちらも5人の同じメンバーで、神田で撮影した写真を神田で並べて見てもらうという企画である。これまでも世田谷美術館での毎回の「写真の地層展」など、グループ展に参加することは珍しくないのだ…
たまに以前見て面白いと思った映画をDVDなどで見直すことがある。あらためて見ると自分の中の漠然とした映画の記憶の塊がもう一度洗い直される。見直す映画も二十歳代までに見たものが、印象の食い違いに大きな差が出てくるようで面白い。トリュフォの映画で…
7月26日に下北沢で行われた「建築写真の内と外」というトークショーに参加した。「建築と日常」誌の編集者である長島明夫さんの司会で、山田脩二さんと大日方欣一さんが多木浩二の建築の領域の仕事を語り合うという企画であった。山田さんの参加ということな…
今「高峰秀子 旅の流儀」という本を開いている。表紙カバーには1963年ごろにロンドンで撮影されたというモノクロームの写真が使われているが、画面の季節は冬、雨上がりらしく路面は濡れてひんやりした空気の感触が伝わってくるようだ。高峰秀子はベージュに…
先だって所用でベルリンに行った際、Iさんのお誘いで折りよくゲルハルト・リヒターの展示を見ることができた。会場の新国立美術館では列を作って入場を待つという状態で、きわめて人気の高い様子をうかがわせていた。いささか恥ずかしい話だが、リヒターの作…