ウチそと研通信116 −「孤独のグルメ」の街の映像など−

暮れから今年の正月にかけてはTV三昧になってしまった。普段TVの無い環境にいるので、たまにTVのある場所で時間を過ごすと、つい画面に見入ってしまうことが多い。今回はNHKの朝の連ドラの総集編を見て、ようやく世間からの遅れをとりもどすことができた。昨年大評判になったドラマと現在継続中のドラマを合せてみたので、二つのドラマの撮影のディレクションの違いもなかなか興味深い。かたや小劇場仕立て、かたや邦画の世界という全体の組み立て方の違いなようにも感じられた。その後に紅白歌合戦もお終いまで見てしまったが、ここでも朝ドラの続きのようなシーンが出現し、総集編と入れ子関係になって見えてこれはなかなか面白いTV体験だった。
年が明けて何気なくTVのチャンネルを変えていると、不思議な俳優がひたすら焼肉を食べている番組に出会った。なんだか初めはわからなかったが、男優はクローズアップの画面の中で眼や口、顔の皮膚や筋肉、汗を総動員して演じて見せている。凄い。あっ失礼、つい番組の台詞が伝染してしまう。モノローグの台詞がかぶるクローズアップの画面に引き込まれながらこの番組、「孤独のグルメ」をまたずっと見続けてしまった。いくつかのシリーズを見続けるとお店の様子の捉え方、演出の手際の良さも楽しみになったが、主人公が訪れる街の映像が際立って鮮やかに感じられてきた。一仕事を終え、また仕事と仕事の間の隙間のような時間に食事する店を物色して俳優の歩き回る、いろいろな街の様子が実に良い。目黒や沼袋、北関東の街など、どの街も画像空間として見事に捉えられているのに驚かされた。今回何篇このシリーズを見たか忘れてしまったが、登場する食べ物のドラマもさることながら、後半では主人公の歩く街の眺めを見るのが興味のひとつとなってしまった。このような見方は個人的なものとは思われるが、主人公の歩行に寄り添ってともにみる街並み、そして歩行という速度感覚が自然に見ているこちら側に流れ込んでくるような撮影の感触はとても新鮮だ。暮れから今年にかけて見た興味深いTV番組への簡単な感想である。