ウチそと研通信129−napギャラリーで城戸保の写真を見る−

年明けに以前から気になっていた城戸保氏の写真を見に行く。これまで氏の作品には印刷物とweb上で目に触れていたに過ぎないが、なかなか印象深く、ようやく展示のイメージを実際に見ることになった。小さな画廊空間に適度な密度で折り込まれているような展示は素っ気ないけれど、押し付けがましさも少なく好ましい。多分、写真の中にも入り込みやすい。Cプリントと思われるカラー作品、そして多くは大きなサイズのプリントで、簡素な額に収められて白い壁面にかけられていた。画廊の方に聞くと、以前に三重の美術館で展示されたものの中からの作品群とのこと。美術館での展示状況写真も見せていただいたが、このギャラリーの展示スタイルが城戸作品との距離をより親密な間合いにしている印象もあった。今回見た作品のほとんどから伝えられる面白さは、面と線の構成、焦点の設定から生じる何らかの奥行きと深浅を、自由に往還させられる感触なのではないだろうか。そのような意図を撮影や画面構成に持ち込む写真家、作家も多いけれど、ほとんどの場合には鼻白む。しかし城戸氏の作品に向かうと、その往還が写真の奥の果てない先まで行き、また見ている鼻先が画面の表面と交わって溶け入るようだ。さらには四角いフレームの存在も消失えてゆくようで、今回の写真の自在さは心地良いものに感じられた。