ウチそと研通信9 −おおぜいで一枚を−

このあいだ、海外の某写真家が撮った一枚をおおぜいの人たちにスライドで見せた。黙って投影しているその画像からどんな印象を受けたか、一人一人にきいてみた(短い時間で白紙に走り書きしてもらった)。そのなかの幾つかを紹介してみます。一枚から生まれでる波紋のひろがりともいえる。きっと走り書きだからこそ、断片的ではあれ個々の反応が率直にあらわれている気がします。それはどんな写真なんでしょう? 

・久しぶりに従兄弟の家へたずねて行ったが、本人は不在で、その子供だけがそこにいた。久しぶりに会ったため、こちらのことを覚えていない、大きくなった彼は、少し離れた所に座ってこちらを見ている。お互いにしゃべらず、ただ静寂がゆっくりと流れてゆく。冬の晴れた午後3時。

・木造の家、カントリーって言葉が似合う。木の椅子にすわる子。外は大草原があると思う。天気は晴れ。これを撮ったのは、ふつうのよくある1日であると思う。“今”をのこしておこうと撮ったのではないか?たくさんのものがある部屋。

・夕方。夕焼けが見える。子供はボンヤリしている。ここはいつも使っている部屋ではないからホコリがたまっている。

・画面中央のクローゼットから、大きな黒い色面が広がっている。その横に座る少年は好奇心にあふれていて、どこか楽しげな表情だ。なんとなく、少年がその闇にいつか引き込まれてしまうのではないかと思った。あるいはクローゼットが突然開き、少年をのみ込んで…

・半そでの少年の横には少し間をおいてサンタクロースの絵がある。その他ポスターの様なものもある。季節感を無視した日常生活が見られる。夏休みのお留守番の様な感じ。空白が多いがあたたかな感じがする。

・つまらない、退屈、待っている少年 農家、晴天、雲のない水色の空、乾いた空気、若い草、冷たい地面 知らない男、無表情 シャッターを切り、何かを少年に与えて去る 少年はこのことを親に語らない 特記することのない平穏なある日の午後、記憶のかなたに去る一瞬

・写っている男の子がよそよそしい感じがしたので、写っている家に住んでいる人ではない、見知らぬ人がファインダーをのぞいている印象をうけた。ごちゃごちゃした家の中を不意打ちで突然たずねて撮ったようなイメージ。

・生物である人間の子供に主体がかたよりそうになるが、画面全体のバランスが、人物に主体がうつりそうな視覚を減少させ、部屋全体を主役にしている所が上手だと思う。また、光が左から入り、子供にあたって、コントラストがキレイでなんかポジティブなイメージ。

・人の不在感。欠乏感。 孤独を包む光の優しさ。見守る者。 子供は「何故自分はここにいるか」という問いなしに存在できる。

アメリカの一般家庭。8才くらいの少年、はずかしがりや、でも目立ちたがり。サンタクロース。壁にたくさんのポスター→場所はアメリカの田舎町? 撮影者は父親?→母親(女)なら、子供を中心に撮影すると思う。空間全体のバランスを考えて撮影されている。季節は夏?←少年の服のはだけ具合から。

・キッチンで、黒いスーツの男性が背を向けて写している。男性の前には、いすに座った子供がいて、男性の手?をじっと見つめている。男性が何か持っているもの(あげようと見せているもの)に興味をもっているようだ。

クイズというわけじゃありませんが、どうぞこの一枚をご想像ください。