ウチそと研通信16  −岡本太郎美術館−


久しぶりに生田緑地へ。
学校の近くにあったので良く通った場所だ。季節ごとにいろんな野鳥を見ることができる。
民家園には何度か行ったことがあるが、プラネタリウムは見た記憶がない。青少年科学館の外観が古いということもあるだろうが、理由はよく覚えていない。プラネタリウムは今ならちょっとしゃれた空間として認識しているが、たぶんその頃は「ニセモノの星空」などと思っていたのかもしれない。
川崎市岡本太郎美術館は学生時代にはなかった。生田緑地では昔、土砂崩れの実験で事故があり、その慰霊碑の先に美術館はある。
この何年か岡本太郎がときどき話題に上る。最近では渋谷の壁画で話題になった。皆が何となくおさまりの良い時代、誰も制御できないその特異なキャラクターが新鮮なのだろうか。最近はそういう人がいない気がする。都知事選のとき、黒川紀章がもしかしたらと思ったけれど残念だった。
岡本太郎自身については語る能力を持ちあわせていないので、美術館の建物について少々。以前に展示のプランニングをしていたせいもあって、博物館や美術館はよく見にいく。自分だったらどんな空間にするだろうか、などと考えながら見ることにしている。だいたいどの施設を見ても、ああすればいいとか、こうすればもっと良くなるとか思うのだけれど、この川崎市岡本太郎美術館は自分ではまったく思いつかない空間だったのでびっくりした。
通常、美術館は展示されている作品が主役なので、展示空間は基本的に無性格なものにする。白とかベージュの壁に囲まれたシンプルな空間が望ましいとされる。照明も作品そのものの色合い、テクスチャーを損ねないように配慮される。作品とじっくりと対峙するために雑音は排除するし、足音でさえなるべくしないように床の素材も考える。
ところがこの美術館はそれとはまったく違った空間になっている。開館当時のコンセプトブックによれば「体感する美術館」だという。
真っ赤な導入空間、時間とともに変化する演出照明、オートスライドや、あちこちに仕掛けられたモニター。またそこから聞こえる音響は互いにかぶり交じり合っている。おまけに岡本太郎人形まで。常設展示室と企画展示室を除けば、展示演出のショールームのようだ。
これだけ個性の強い空間だから好き嫌いの分かれるところだろうが、私としては、好きな美術館のひとつである。紅葉の生田緑地も気持ちよく、散歩にもお勧めである。