ウチそと研通信47 −体のウチそと−

骨を美しいと思うようになったのはいつからだろうか。
小学生の頃、死んでしまったカエルを軒下に埋めた。あとで掘り起こして骨格標本にしようと思ったのだ。ところが埋めた場所を間違えたのか、分解されてしまったのかもう骨は見つからなかった。
高校生のとき、「アルタミラ(ALTAMIRA)」(武田秀雄 冬樹社)という絵本を買った。漆黒の中に点描で白く浮かび上がる動物たちの骨が美しい絵本だった。それぞれの動物の特徴的な動作が表現されていて、描かれた動物が何であるのか考えるヒントになっている。
大学のサークルでは学園祭で毎年カレーを売っていて、その製造場所が戦前からあるという木造の解剖棟だった。新しい解剖棟ができていたのでそのときにはほとんど使われていなかったが、解剖研(解剖学研究室)の物置のようになっていて、いろんな動物の骨が置かれていた。それらの様々な標本を見ながら、その標本をつくるために動物の骨を煮る大きな寸胴なべをつかってカレーを作っていた。そのときに見ていた標本のなかにひときわ大きな頭部の骨があった。以前、解剖研からおすそ分けで肉をもらったキリンの頭だった。そのキリンはその後、立派な全身骨格標本となり上野の博物館に展示されている。
このお盆、名古屋の実家に帰ったあと滋賀県立琵琶湖博物館に行った。オープン(1996年10月)してからだいぶ経っているがなかなか見る機会がなかったのだ。また現在開催されている企画展が見たかったので、京都へ向かう途中で足を運んだのだった。琵琶湖博物館はその基本理念にあるように、
“「湖と人間」というテーマにそって、博物館が本来持っている研究調査機能を柱として、自然と人の両面から、琵琶湖とその他の湖沼についての知識・情報を集積し、それらが展示や交流活動に反映できるような博物館をめざし”
ていて、通常別々に扱われてしまう自然、歴史、民俗それぞれの分野を、琵琶湖という環境を中心にして総合的に扱っているのが特徴である。
今回の企画展「骨の記憶 あなたにきざまれた五億年の時」は、規模はそれほど大きなものではなく、また展示も手作り感のあるものだったが、その内容は専門的な情報から、子供にもわかりやすく解説したものまで、様々な工夫がされていて、親しみやすいものだった。夏休みのため家族連れが多かったが、子供たちの様子を見ていると特に怖がったり気味悪がったりするようなこともなく楽しんでいるようだった。
展示の中でとくに面白かったは「ほねほねくらぶ」というサークルが作った標本の展示だった。自分たちで食べたタイやシャモ、事故で死んだタヌキなどの標本が展示されていた。中でもペット(ハムスター、イヌ等)などの標本は飼い主の愛情さえ感じられるもので、昨今のペットブームのいびつさに比べて、人間と動物の正しい距離感を思った。