ウチそと研通信82 −ローレンツ氏の蝶(イベント告知)−

若い(干支でちょうど一回り、僕より若いのでそう言っておきますが)写真家の小平雅尋さんが、写真集『ローレンツ氏の蝶』を作りました。写真出版の自主レーベル「シンメトリー」を設立して、そこからの出版です。プレスリリース用の案内に、彼を紹介する文を書くことを請け負い、どう書けば本が売れるのかと悩みましたが、結果次のような短文になりました。

※小平雅尋『ローレンツ氏の蝶』について

平氏は、テーマを立てて計画的に制作をすすめるタイプというより、流れる日々のなかで、さまざまな事象の深みに、とりまく世界のひろがりに感官を凝らすことを錬磨し、スナップショットの行為に賭けることを続けてきた写真家である。
1972年生まれの小平氏は、東京造形大在学中より、高梨豊田村彰英をはじめとする先行世代のスナップショットの名手たちに学び、モノクローム銀塩による表現の可能性を探究しはじめた。つづく1990年代後半に、写真家大辻清司のアーカイヴ研究を目的に有志で結成した「写真実験室の会」のコアメンバーとして活動した氏は、1950年代から80年代に撮影された大辻の膨大なネガからモダンプリントを焼く暗室作業に集中して取り組む数年間をもった。このことは、氏の写真にたいするスタンスに大きな作用を及ぼしたと見られ、彼の写真眼をよりたくましいものにした。
今回上梓する第一写真集『ローレンツ氏の蝶』の収録作は、ミレニアムをまたいだ2000年代初め頃から、カオス理論、複雑系科学に由来するこの題名を得て、しだいに形をなしてきたスナップショットのシリーズである。自然や人間界の事象のたえまなく変容をきざむさまを微視的に捉えたこれらの写真は、流体的なしなやかさ、そして純度の高い抽象性をそなえる。ここで小平氏のカメラアイは宇宙を観ずることに専心し、ある手ごたえを提示している。

以上です。
上記出版を記念して小さなイベントを催すことになったので、お知らせします。トークショーは苦手ではありますが、頑張るつもり。みなさんどうぞお気軽にご参加ください。


■小平雅尋写真集「ローレンツ氏の蝶」  

 顔料インクジェット出力 + 手製本によるアーティストブック
 A4判 ハードカバー 32ページ 限定500部
 発行:シンメトリー
 定価:3,150円(税込)ISBN978-4-9906013-0-0
 2011年11月下旬発売予定

■出版記念イベント
 ○トークショー
  大日方欣一(フォトアーキビスト)、増田玲(東京国立近代美術館主任研究員)、小平雅尋    
 ○写真集制作現場のドキュメンタリー映像上映
 ○オリジナルプリントの展示・写真集の販売       
 ○出版記念パーティー
 
  入場無料   

  日時:2011年12月9日(金)18:15開場 18:30〜20:30
      
  場所:渋谷道玄坂 FORUM8  7階 707会議室          
     東京都渋谷区道玄坂2-10-7 tel:03-3780-0008