ウチそと研通信137−ライカ発表会でラルフ・ギブソンの「DEJA-VU」を思い出す−

先の11月6日に虎ノ門で催されたライカ社の新製品発表会を覗いてきた。ライカSLと名付けられたフルサイズセンサーを持つ、一般的にミラーレスと呼ばれるタイプのデジタルカメラが新製品として発表され、会場では製品プロモーションのビデオクリップが繰り返しスクリーンに投影されていた。動画撮影機能もこのカメラの売り物の一つで、ビデオクリップのなかでも簡単なプロの撮影現場の紹介されていて興味深い。ツアイスのシネマレンズに対抗する気構えだろう。他にもプロの撮影風景なども上映されていたが、ここ数年のライカ製品のプロモーションではコマーシャル、ドキュメントなどのプロフェッショナル写真家たちが登場することが多く、ライカはライカカメラの意味をプロフェッショナルカメラとして、こう認識して欲しいという姿勢が強くにじみ出ているようだ。出てくる写真家たちの風合いは当たり前ながらどこか共通している。
そういえば、かなり以前にラルフ・ギブソンもライカの工場を取材したポートフォリオを、ライカが出していたなと帰りの電車で思い出した。明暗比の高い粗粒子のモノクロでレンズやカメラの製造過程などを捉えている。仕上がりはラルフ・ギブソンらしい味わいではあったが、特に優れたという印象ではなかった。しかし、現在とは経営が異なるためだろうか。なんだか例えは奇妙だが、牧歌的な感触のパンフレットとなっていた。翌日、積み重なった写真集から大昔の「DEJA-VU」を拾い出してみた。出版当時はそれなりに話題になり、「カメラ毎日」にも抄出されていたことを記憶している。撮影にはどうやらライカも使われているらしいと、その頃情報通のT氏に教えられている。改めてみると、タイトル、装丁など当時流行った裾広がりのパンタロン(つまりラッパズボン)を思い出すようで、少々くすぐったい気持ちになるが相変わらず面白い写真集だ。写真の対象は都市の一隅、光と影のコントラストが強調された情景、海辺、フリーズした表情の人間たちなどだ。写真集を見開くと、対抗するページの写真は類似、あるいは連想、また対照を持って組み合わされ、シンプルなリズムで見てゆくことができる。一枚一枚の写真はやや思わせぶりだが、乾いた表情で抑制が効いていて好ましい。その後のラルフ・ギブソンの写真はややエロティックな写真が多くなるが、太字で書かれたウォーカー・エヴァンスという部分がこの写真集にはあって個人的に面白く感じたのかと思う。こうした古い写真集をまた見直すと、これもまた悪くはないなと思う。今回見ると、毛髪や動物の毛、細いものが絡まりあうイメージが多いのが不思議に眼に残っている。