ウチそと研通信4 −動画と静止画−

終了間近の東京都写真美術館の「液晶絵画」展に行く。
マルチメディアという言葉が陳腐に聞こえるほど、現在ではさまざまな表現手法が交じり合って、それぞれの境界は曖昧になってきている。私は、かつて通った専門学校では映画と写真の両方を学び、最終的に自分の表現手段としては写真を選択しているのだが、動画への興味を失ったわけではなかった。どちらに軸足を置くにしても、双方の表現を行き来することが必要なのではないかと思っていたので、今回の展覧会は興味深く観覧した。 
個々の作品について感想をここで述べることはできないが、あらためて感じたことは、写真(静止画)が動いているものが映画ではなく、同じく動画が止まっているものが写真ではないのだという当たり前のことだった。同じテーマ、素材であっても写真と動画ではそこから受ける印象がまったく異なるのだった。その意味についてあれこれと考えてみたのだが、それは印画紙とモニターという出力方法や解像度の違いによるものではなく、観覧者に対するそれぞれのメディアの働きかけの強弱の違いではないかと思い至った。テレビを見慣れているせいか、われわれは動画に対して受身になりすぎているように思う。それに比べ写真は、見る側に能動性を求める。この態度の違いが作品に対する印象を変えていたのだろう。